アクセンチュア株式会社 テクノロジーコンサルティング本部 クラウドファーストアプリケーション アジア太平洋・アフリカ・中東地区統括 マネジング・ディレクターを務める篠原 淳氏は、20年以上にわたりテクノロジーを活用したビジネス変革に取り組んでいる日本企業を支援してきた。

篠原氏は、デジタルトランスフォーメーションは、日本企業が早急に取り組むべき課題だと提唱している。日本は確かに、世界最速の新幹線ロボット装置、果てはロボットレストランまで、日常生活におけるあらゆる面でテクノロジーを活用した革新的かつ効率的な社会を構築しているが、顧客価値の向上を図るべく新たなテクノロジーやプロセスを導入するとなると、国内のサービス産業は海外の同業他社と比べて未だに後塵を拝していると言える。

「デジタルトランスフォーメーションとなると、日本は米国に3年、ヨーロッパに1年遅れを取っている」と篠原氏は言う。「ただ、日本企業にとってグッドニュースは、(ビジネストランスフォーメーションの)何がうまくいって、何がうまくいかなかったかを事前に知ることができ、そこから最善の道を選択できることだ。」

デジタルビジネスの成功に向けたロードマップ

日本、そして世界では、サービス産業におけるデジタルトランスフォーメーションに対するニーズは大きく3つの条件に分けることができる。1つ目は、スキルのギャップと慢性的な労働力不足の環境下で、企業はより少ない労力でこれまで以上のことをやらなければならないこと。2つ目は、より実用的なデータを活用してコストを削減し、売上をさらに上げること。そして3つ目は、顧客サービスと顧客価値の向上にさらに注力することである。

IoTやAI、クラウドコンピューティングの進化、そしてその他のデジタルテクノロジーの発展により、日本でもデジタルトランスフォーメーションに弾みがついていると篠原氏は言う。彼はまた、デジタルトランスフォーメーションは、インハウスのサーバーからクラウドに移行するといった単なるモダナイゼーションの一手段ではないと指摘している。

「日本が得意とする『カイゼン』、いわゆるビジネスプロセスの継続的かつ漸進的な改善はよく知られている。しかしながら『カイゼン』とデジタルトランスフォーメーションは大きく異なり、『カイゼン』が現在を基点としているのに対し、デジタルトランスフォーメーションは未来を基点として企業にとって全く新たな将来を再考し、創造することであり、それを基に目的を達成するための計画やロードマップを作成するものだ」(篠原氏)。

デジタルトランスフォーメーションとは、例えばAIを導入して、エラーメッセージを受信した際に自動でサービスやディスパッチを支援し、効率的かつ迅速に顧客の問題を解決することだと篠原氏は説明する。またデジタルトランスフォーメーションの一環として、予測的保全(プレディクティブ・メンテナンス)とサプライチェーン管理による大幅なコストダウンもサービス部門の共通した目標である。

さらにデジタルトランスフォーメーション実現の要諦として、顧客価値を向上させるためのインサイトの収集・活用が挙げられると篠原氏は述べている。

日本企業における従来のサイロ化された組織では、フィールドサービス部門によって収集された顧客に関する多くのインサイトが他部門に上手く連携できず、重要なインサイトが活用できていない状況にあります(篠原氏)。対して、組織に「360度のカスタマービュー」を取り入れた場合、従来分断されていた組織の各部門を横串にしてデータが共有されるため、異なる部門でも顧客に関する重要なインサイトを共有することが可能になる。過去の保全状況や修理パターンに関するデータを企業全体で共有することにより、顧客の問題を迅速に解決し、将来的なビジネスチャンスも予測できるようになる。同時に、フィールドサービス部門により収集されたデータは、セールスやマーケティング部門でも活用し、売上増につながるメッセージを発信できるようになるのである。

例えばクラウドアプリケーション、SaaSプラットフォーム、コネクテッドデバイス、AI(人工知能)を効果的に活用し、組織間での連携が取れている事例として、ヨーロッパの部品メーカーが挙げられる。この部品メーカーは、集中運用管理、ディスパッチ、修理、予測的保全およびその他の活動など、フィールドサービスマネージメントのあらゆる側面を組織横断で連携することで、サプライチェーンの合理化、コストの削減、より実用的な顧客のインサイトの収集に成功し、新たなビジネスチャンスのきっかけにすることができた。

「企業の成功の鍵は、CEO自身がデジタルトランスフォーメーションを推進することだ」と篠原氏は述べている。「IoTやAIといったデジタル技術を活用することで、変革のスピードが加速している。」

日本企業固有の課題

世界中のどの企業にとっても、フィールドサービス部門の変革は容易ではないが、日本企業の場合は独特の課題に直面している。

ヨーロッパの部品メーカーの例では、デジタルトランスフォーメーションのプロセスは経営陣が主体となって進めているが、日本企業では個別に運用されていると篠原氏は指摘する。「例えば、ビジネス開発の人間はフィールドサービス部門とはあまり関わりを持っていないため、カスタマーエクスペリエンスまたは顧客ニーズに関する戦略的インサイトを共有するといった有意義な機会はほとんど持てていないのが現状だ」(篠原氏)。

篠原氏は、もう1つ日本企業の分断された性質が招いた結果として、一般的にフィールドサービス部門は、新たなテクノロジーやプロセスを効果的に導入するための予算がなく、他部門への影響力が小さいことを挙げている。結果として、日本におけるフィールドサービス領域のデジタルトランスフォーメーションは、断片的なものとなり、その効果も小さくなってしまっている。

「一般的に日本のチーフカスタマーサービスオフィサーは、顧客との重要なコンタクトポイントであるにもかかわらず、日本の組織ではメジャーなプレイヤーではない」と篠原氏は語る。

「そこで、アクセンチュアの重要な役割となってくるのが、組織内の壁を取り壊し、CEOやCIOからセールス部門の役員を含む各部門長を集め、企業が一丸となってビジネストランスフォーメーションを推進できるよう音頭を取ることだ。」

インタビューの帰結として、篠原氏は各顧客をパーソナライズし、統合プロファイルを提供する前述の「360度のカスタマービュー」が重要であるとしている。

End-to-End Journey

「360度のカスタマービューは、マーケティング、ビジネス開発、顧客獲得、製品デリバリー、アフターセールスサービス、修理などを含むビジネスプロセスを連携するエンド・ツー・エンドのジャーニーだ。サービス部門が顧客とのタッチポイントとして機能することで、彼らのインサイトがビジネスにおける顧客価値の向上に寄与することができる」(篠原氏)。

顧客を中心に据えたデジタルトランスフォーメーションを推進することで、変化の激しい市場で飛躍的に成長する機会を獲得することが可能になる。

「アクセンチュアは企業のデジタルトランスフォーメーションの戦略立案から実行まで、エンド・ツー・エンドで支援できる企業として、今後も多くの日本企業と変革を進めていく。」と篠原氏は語った。

【著者略歴】 Nevin Thompson

アバター多種多様な業界で活躍するジャーナリスト、コピーライター、コンテンツストラテジスト。