ヘルスケア産業のサービスは一筋縄ではいかないものであり、法的規制やコンプライアンス基準を遵守しつつ、救命医療機器の正常な動作を維持しなければなりません。しかしGEヘルスケア・ジャパンの場合、フィールドサービスデリバリの管理方法を改善した理由はこれだけではありませんでした。

「日本の規制では紙ベースのサービスレコードを7年間保存する必要がありまますが、神戸などを襲った1995年の阪神・淡路大地震や、大津波を引き起こした2011年3月の東日本大震災などの大規模な自然災害の発生後に分かったことですが、物理的なファイルを保護するのは困難です」とGEヘルスケア・ジャパンのサービスデリバリを統括する藤谷 京子氏は述べています。

藤谷氏は、解決策の一環として企業のシステムをクラウドに移行することにしたと語っています。藤谷氏はフィールドサービスのリーダーが10月に主催したイベントMaximize Tokyoに登壇し、業界大手の新しい戦略、商流、そして最終的には顧客との新たな対話方法の構築について説明しました。

サービスデリバリモデルを再検討

GEヘルスケア・ジャパンは日本国内のサービス部門で約500人を擁しており、全国を横断して106,000以上の医療機器や装置に対するサービスを提供しています。同社のクラウド活用の選択は、紙ベースのサービスレコードの管理プロセスを移行するだけではありませんでした。いかなる事態においても高価な医療機器や装置を止めないといった要望に応えることも移行した理由でした、と藤谷氏は説明しています。

藤谷 京子 氏

「私たちの顧客からは、機器の24時間365日の稼働を保証してほしいとの強い要望があります。もし機器が止まることがあれば、機器に依存する患者の命に関わることになりかねません」(藤谷氏)。

GEヘルスケア・ジャパンは、ここ5年でフィールドエンジニア向けにiPadベースのモバイルソリューションに移行したことにより、サービスデリバリの効率化を図りました。この移行は国内におけるWiFiの普及とその他のテクノロジーの進化のお蔭であり、オフラインの報告機能と電子署名を活用することで顧客にシームレスなサービスレコードの迅速なデリバリを可能にしました、と藤谷氏は述べています。

「ITテクノロジーの革命が日常生活に浸透するにつれて、顧客が求めるサービスも変化してきました。そこで私たちは、果たして自社のサービスモデルが今でも有効なのだろうかと自問し、これがアプローチを変えた理由の1つになっています。意思決定を効率化するにはデータが必要であり、テクノロジーがデータ収集と意思決定に役立つことは明らかです」(藤谷氏)。

藤谷氏は、成功する上で欠かせないのは組織がいかに迅速にデータを収集し、分析できるかにかかっていると強調しています。

「ブロードバンドの普及のお蔭で、私たちは医療機器から膨大な量のデータを収集することが可能になりました。私たちはデータを比較的迅速に分析していますが、顧客ニーズと医療機器の進化は目覚ましいものがあり、私たちも常に追い付いていく必要があります」(藤谷氏)。

藤谷氏はまた、GEヘルスケア・ジャパンのサービスデリバリの変革を支援しているもう1つの強力なトレンドがあると指摘しています。それは情報を定常的に送信するIoT対応デバイスの能力であり、サービス技術者は新しいビジネスチャンスを掴み、プロアクティブに問題の発生を防止できるようになりました。

予測的保全の通知による企業文化の刷新

予防的および予測的保全により、障害が発生する前にリモートで機器や装置を修理することが可能になります。

「GEヘルスケア・ジャパンは、問題が発生する前に顧客に警告または通知する方向に移行しようとしています。私たちは常に顧客と接しており、自社のチームにこうした考えの元に学習し、行動をとるための支援を行っています」(藤谷氏)。

しかし藤谷氏は、こうした企業文化への移行は決して易しいことではなかったと認めています。

「まずはどう変えたいのかを決定し、その後にどのように変えるのかを決めなければなりません」(藤谷氏)。

IoT対応のサービスデリバリに移行するために、GEヘルスケア・ジャパンはServiceMaxと協業しましたが、クラウドを活用したフィールドサービスマネージメントの実現にServiceMaxは大きく貢献しました(Field Service DigitalはGEが所有し、ServiceMaxが発行しています)。

「ServiceMaxのクラウドベースのIoTサービスデリバリプラットフォームなどの新たなテクノロジーを見つけ出し、導入することはGEヘルスケアの日本でのビジネスにとって非常に重要です」と藤谷氏は語っています。特に社会が高齢化し、ヘルスケアのコストが増えているため、新たな革新的な方法によるコストの削減が望まれています。

「私たちは顧客が一度機器を購入したら、その後に正に望んでいるものを必要な時に常に提供したいと考えていますが、5年後10年後には顧客のニーズも変わっていると思いますので、将来のニーズを汲み取ることも非常に大切だと言えます」(藤谷氏)。

【著者略歴】 Nevin Thompson

アバター多種多様な業界で活躍するジャーナリスト、コピーライター、コンテンツストラテジスト。