編集ノート:この記事は3月25日に発行された「2020 Chief Service Officer(CSO)Report(2020年チーフサービスオフィサーレポート)」からの引用文が含まれています。
チーフサービスオフィサー:未来のデジタル社会を実現
「チーフサービスオフィサー(CSO)」という肩書はあまり馴染みのないものですが、サービスリーダーたちが与える影響は益々大きくなっています。なぜなら第一にサービス部門はカスタマーバリュー(顧客価値)に大きなインパクトを与え、結果として顧客との関係を前進させるからです。
Forrester Consultingによる製造会社に関する最新調査では、デジタルトランスフォーメーションのリーダーたちは、今後もサービスはデジタル化を成功させる上で重要な役割を果たすと考えていることが判明しています。こうしたリーダーたちがデジタル化を成功させるために、以下のサービスを主体とした活動を重視しています:
- ビジネスの判断に役立つ機器/サービスデータの収集
- サービス担当技術者のデジタルスキルセットの向上
- NPSと顧客満足に関するメトリクスの改善
アジアのケース:有効資源の活用を最大化
アジア太平洋地区/日本(APJ)では、人材やサービスオペレーションをサポートするためのテクノロジーの活用に関してそれぞれ非常に異なる課題を抱えています。日本やオーストラリアなどいくつかの国では、人材難が人件費の高騰を招いています。また、その他の国では、人件費が安い豊富な人材を確保できますが、課題に対応するために非効率な手作業に依存しています。
テクノロジーの観点から見ると、コンシューマレベルではあらゆるツールがあらゆる所で使用されていますが、サービスを提供する企業レベルではまだまだ浸透していません。国で見ると、サービスに対する文化的偏見、時代遅れのポイントソリューションへの依存、非効率なプロセス、あるいはビジネス価値をもたらすソリューションの活用に対する教育不足といった課題が挙げられます。以下は日本のサービスリーダーが主に重視している内容になります。
限られた労働力
よく知られたことですが、日本ではすでに高齢化社会の問題に直面しています。厚生労働省から発行されたレポートでは、2019年の出生数は864,000人にまで落ち込んでおり、1899年からの調査開始以来最も低い数字となっています。2040年までには日本の人口の3分の1が65歳以上になると予測されています。
また、ほとんど進んでいない移民政策も状況を悪化させており、今後も移民政策の変更あるいは刷新の予定も見られません。その結果、労働コストの高騰を招き、サービス部門でも優秀な人材を確保できなくなっています。組織はリクルーターへの依存度を高めていますが、特に人口が減り、「終身雇用」文化により離職者が限られているため、新たな人材を採用するのが困難になっています。
サービスイノベーション
日本の組織は、製造現場や製造の自動化といった点では常に先端を走ってきました。しかしながら、こうした優れた能力はサービスに対する文化的な考え方から決してサービス実行にまで拡大されることはありませんでした。また、バックオフィスの効率化や、特にサービス関連のビジネスケースにおいて容易に達成できる目標でも、文化的および顧客の嗜好が変化することを阻害してきました。
例えばある大手医療機器メーカーでは、400名のバックオフィス要員が800名のサービス担当技術者をサポートしており、サービス部門の非効率性を表しています。さらに調べてみると、バックオフィススタッフの中で大人数のグループが手作業による準備、印刷、そして請求書の発行を任されていることが判明しました。これは大きな誇りを伴う昔ながらの伝統だと言えます。こうしたプロセスを自動化することは、どんなに効率性を高めることができても、労働コストが限界値に達するか、もしくは、プロセスを完全にこなせるロボットが発明されるまで決して実現されることはありません。それゆえ、サービスリーダーは伝統文化と衝突せず、組織で計画的変更が許される領域の効率化と、それによってもたらされる付加価値を見定める必要があります。
前進するための推奨事項
サービスリーダーたちがデジタルサービストランスフォーメーションを進める上で、次の内容が推奨されています:
既存の提供サービスのポートフォリオをレビューする。現在の組織におけるサービスポートフォリオをレビューし、顧客に提供されているソリューションが備えるカスタマイゼーションのレベルを真に理解することが欠かせません。カスタマイゼーションの度合いが高ければ高いほどサービスコストが嵩み、カスタマーエクスペリエンスの質も低下してしまいます。
サービスの効率化の討論にその他の部門/業務を含める。サービスの効率化を推進する際に、プロセス、トリアージ(選別)、スケジューリング、そしてディスパッチといった分野にフォーカスしがちになります。これらの領域は確かに大幅な成果を得ることができますが、注力分野をサービス部門に特化してしまうと、サービスの効率化に影響を及ぼすその他のビジネス領域を見過ごしてしまいます。
インストールドベースの理解を強化する。ほとんどのサービス部門では、インストールドベースをよく把握していません。アセットのロケーション、パフォーマンス、サービス履歴、あるいは保全対象の構成内容といった情報は、活用次第で事後対応のサービスや予防的サービスに生かすことができます。
共通のサービス言語を作成する。共通のサービス言語は、ビジネストランスフォーメーションを成功させる上で必要です。障害および解決策に関する情報を標準化した言語は、事後対応のサービスや予防的サービスの改善に貢献することができます。
デジタルサービスへの橋渡しにアフターマーケット(製品購入後)サービスを活用する。たいていの製造業者は、インストールドベースにおけるアフターマーケットのビジネスチャンスといった大きな商流を未だに捉えきれていません。設置率、カバー率あるいは更新率によっては、アフターマーケットのサービスで、製品寿命が尽きるまでビジネスチャンスが続く可能性は計り知れないほど大きい場合があります。
組織のコネクテッドプロダクトロードマップへの関与を高める。多くの製造業者ではコネクテッドプロダクト戦略を立てています。サービスおよびビジネスの次なる差別化領域は、予測的サービスや付加価値サービスに関連するものであり、アセットからダイレクトに収集されるリアルタイムパフォーマンス情報のフローに大きく依存します。
顧客と価値観を共有することでエンゲージする。サービス部門は、顧客組織における多様なステークホルダーにアピールするような行動規範を理解し、価値観を明らかにするためのアカウント管理またはカスタマーサクセスの体制を整える必要があります。
組織全般で共有できるジャーニーマップとプロセスマップを作成する。接客業務であるなしにかかわらず、カスタマージャーニーを真に理解する上で組織全体にとって非常に貴重なものとなります。ステークホルダーが組織の他の従業員に対するインパクトを理解する上で、このようなマップを作成することが役立ち、組織内の部門や業務に存在するそれぞれ独自の考え方を改めることができる可能性があります。
サービスアーキテクトを検討する。組織がサービスポートフォリオを拡張する場合、新しいサービスを考え、設計する上で、パフォーマンスデータや顧客からのフィードバックを取得し、各リソースの能力を把握しているサービスアーキテクト、あるいはサービスにフォーカスした製品開発チームの編成を検討することが大切です。